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ブランドを変革する

By: Aquent

〜五感に響くこれからのブランディングのカタチ〜
LAST UPDATED: 2024/12/25

AQUENTでは、様々な業界や職種における最新トレンドや課題、その解決につながるヒントの提供や啓発を行うべく、グローバルで「DIGITALKS」と呼ばれるウェビナーを行っています。

今回、日本で開催された第2回目の「DIGITALKS」。ゲストスピーカーとして、世界的に実績のあるブランディング会社のランドー社より、デザインディレクターの飯田訓子氏を迎え、ブランディングの最前線と競争優位性を促進するブランドエクスペリエンス(BX)のポイントについてお話しいただきました。

この記事では、今回の講演の内容についてご紹介いたします。

【DIGITALKS CONTENTS】
変わりゆくブランディングのカタチ(エイクエント 西願 真弓)
 ブランド価値を伝える
 他にはできないブランディングを
 ブランドを体験する
 ブランディングのこれから
競争優位性を促進するBX:事例から紐解くトレンドと将来像(ランドー 飯田 訓子 氏)
 はじめに
 ブランド変革を推進するブランド体験の開発
 ブランドの中核になる「志」を定義
 ブランドの開発のプロセス「Brand」「ing」
 ブランドを擬人化する
 聴覚に働きかけるソニックブランディング
 競争優位性を促進するBXのポイント
これからのマーケターやデザイナーに求められるマインドセットやスキル(エイクエント 西願 真弓)

変わりゆくブランディングのカタチ(エイクエント 西願 真弓)

セッション第1部ではエイクエント・エルエルシーの西願より、自身の体験を交えながらBXの現状とそこから見えてくる変わりゆくブランディングのカタチについて解説しました。

ブランド価値を伝える

「あなたが好きなブランドは何ですか?」という問いとともに始まった、第一部。
ロゴやお気に入りの商品、店員さんの笑顔、お店を訪れたときの香り…。
ブランドに対する好意は、そのお店を訪れたときの様々な思い出に由来しています。
従来のブランディングの定義では、ブランドが提供する価値や大切にしていること、他と異なる点を企業が顧客に伝えることが重要視されていましたが、最近ではその傾向が変わり、単なる機能性から離れ、買う側が意味や価値を求める時代に変化してきています。

「モノ」から「コト」へのシフト。これは、企業が顧客に対してより深いメッセージやストーリーを届ける必要性を示しているのではないでしょうか。

他にはできないブランディングを

SNSを通じてブランド体験を共有したり、商品レビューを投稿したりすることが容易になったデジタル時代において、顧客は自身の発信を通じてブランドイメージに影響を与えるようになっています。このため、企業は一方的にブランドイメージやストーリーを伝えるのではなく、顧客の共感を得ることが重要な要素となります。

商品やサービスの提供においては、内容だけでなく、広告やプロモーションの表現、アフターサービスなど、すべてのタッチポイントでブランドイメージやストーリーを、一貫した形で顧客に体験させることが求められています。
変わりゆく時代の中で他者にはできない独自のブランド体験を構築することが、これからのブランディングの形と言えるのではないでしょうか。

ブランドを体験する

「GUCCI COSMOS」と名付けられたエキシビション。音や色、その響きで五感に働きかける映像から始まるグッチの物語。

先日訪れたラグジュアリーブランド「GUCCI」の世界巡回展について西願は、来場者が実際に店内で買い物をするように引き出しを開けてスカーフを鑑賞し、身体感覚を伴う新しい試みが印象的であったことや、学芸員に代わり、黒いスーツに白い手袋を身に着けたGUCCIの店員のような男性たちが、エキシビジョンで接客を行うスタイルも新鮮で深く印象に残ったと述べていました。

この体験を通じて、五感に訴える音や色、手触りなどの要素を戦略的に活用し、顧客との深いつながりを築こうとする意図や、ブランド特有の価値観やストーリーを一貫したサービスとして提供し、クオリティやおもてなしの心をもって体験を届けようとしていることが非常に感じ取れるものであったと紹介していました。

ブランディングのこれから

ブランディングの形が変容してきている今、それを生み出すマーケターやデザイナーに求められることも変化しています。

クリエイティビティやユーザビリティ、感情的なつながりを通じて、魅力的で記憶に残る顧客との関係性を作り出すBX。これを生み出す人材には何が必要なのか、後半で考察していきました。

競争優位性を促進するBX:事例から紐解くトレンドと将来像(ランドー 飯田 訓子 氏)

セッション第2部では、ランドー社 飯田氏より、ランドー社のご紹介、そして、競争優位性を促進するBXのポイントやこれまで手掛けてきたブランド体験の事例についてお話しをいただきました。

はじめに

ランドー社は1941年にサンフランシスコで設立された、ブランディングにおいて世界的に実績を誇る会社です。今日のブランディングの標準となる調査・戦略・デザインなどの方法論とツールを確立してきました。

そして、ランドー社の事業全体にわたる共通の目標は、ブランド変革をデザインするというもの。これを実現するために、ランドー社では、ブランド戦略、ブランドパフォーマンス、ブランド表現、ブランドマネジメント、企業文化&社員体験、ブランド体験の6つの側面からサービスを提供しています。
クライアントの事業戦略とブランドを結びつけて、ブランドの力を引き出し、変革を実現するようサポートを行う中で、今回は、「ブランド体験」に焦点を当てお話しいただきました。

ブランド変革を推進するブランド体験の開発

ランドー創設者Walter Landorの言葉
「製品は工場で作られるがブランドは心の中で創られる」

様々なブランドがブランドらしいサービスや体験を模索していますが、ブランドは、お客様の心の中で形成されるイメージによって初めて存在する。つまり、ブランドそのものは物理的な存在ではなく、個々の記憶や心証が重要な要素となると述べていました。

ブランドの中核になる「志」を定義

人の心の中に認識を作るためにはどうすればよいのでしょうか、と飯田氏は問います。
重要なことは、ブランドの中核をしっかりと定義するということ。ブランドの中核は「志」に相当し、これはブランドの意味や意義が人を惹きつける重要な要素であることを示しています。したがって、まずこの「志」をしっかりと定義し、その上で、顧客の心の中にこの志をどのように醸成していくかが、ブランディングやブランド体験の構築において非常に重要なポイントとなると解説していました。

ブランドの開発のプロセス「Brand」「ing」

「ブランディング」は大きく二つのプロセスに分けられると飯田氏は述べています。
最初は志を明確にしてブランドストーリーを作成する「Brand」のページ。そしてもう一つはブランドストーリーを発信する「ing」のフェーズ。

特に「Brand」のフェーズでは、このブランドがどのような事業を推進しているかというビジネス戦略と共に、ブランドの理念や独自性をストーリーとして統合し、人間味あふれるブランドの個性を形成することが重要です。

また、「ing」の開発で重要なのは、ブランド体験だけを切り離して考えるということではなく、基本的にこの概念の流れの中でブランドの体験が発想されて形作られることが非常に重要で、それがブランドの一貫性を持った体系構築を可能にします。全体を通した視点で戦略的にプロジェクトを企画し、遂行していくことが成功の鍵となると飯田氏は述べています。

ブランドを擬人化する

ブランド体験の開発でキーになるのが、ブランドコンセプト。
ブランドの体験を考えるときに、ブランドを擬人化して一人の人間のように考えることが非常に有用です。FEEL、LOOK、TALK、DOを、ペルソナを作るような感じで包括的に考えていくことがとても大切だと解説した、飯田氏。

さらに加えて、どんな夢を描いているかということを伝えることが重要で、ブランドもやはり「夢」を伝えることで、より魅力的なブランドになることができます。ここで作られたブランドのアセットがDNAになって、様々なタッチポイントでブランドにふさわしい表現を創っていくことが基礎になっていきます。

これらの効果は、時代が変わっても基本的に根本が変わらない、一貫したブランドらしさを作ることができるメリットがあると、有名企業・ブランドのOMO (Online Merges with Offline)の実例を用いて紹介していました。

聴覚に働きかけるソニックブランディング

デジタル技術の進化や、AI活用が進む中で、マーケティングの文脈でも「センサリーマーケティング」という、顧客の感覚に働きかけ、顧客の評価や知覚、行動に影響を与えるアプローチがありますが、ここでは五感の中でも聴覚に焦点を当てた「ソニックブランディング」について、007の事例を用いて具体的に解説していただきました。

サウンドがなぜブランディングに効果を発揮するのか?
・サウンドは瞬時に伝わる
・サウンドは高密度のデータを運ぶことができる
・サウンドはポジティブな雰囲気を作りだすことにも寄与する
・サウンドは信頼にも影響を及ぼす

独自性のあるサウンドはブランドの差別化にもつながる重要なブランドアセットになるので、世界中の企業で、サウンドの重要性が認識され始めています。
ランドーでは音のブランドを「Sonic DNA®」と呼び、それは、ムービーなどで共に出されるジングルにとどまるものではなく、全ての事業にまたがって、あらゆるブランドのタッチポイントで、ストーリーテリング効果を発揮していくものです。
音のアセットは、ブランド認知を高めながら、さまざまなタッチポイントで顧客とつながりを作ることを可能にしていくと飯田氏は解説していました。

競争優位性を促進するBXのポイント

  1. BXは、ブランドの志を軸としてつくる
  2. BXは、オンライン・オフライン融合で、顧客がいかに快適なブランド体験を行えるか
  3. BXに、五感を使うことはブランドを人の記憶に残すために有用である
  4. BXとは、共感をいかに創出できるか

人の心の中にイメージが作られて、初めてブランドになっていくため、共感の創出という点に一貫性を持って、「創る」、「伝える」ことが大変重要になります。
この4つを心にとめておきながらブランド体験を創っていくべきであると飯田氏は述べていました。

これからのマーケターやデザイナーに求められるマインドセットやスキル(エイクエント 西願 真弓)

セッション第3部では、今回のウェビナーのまとめとして、これからのマーケターやデザイナーに求められるマインドセットやスキルについて解説しました。

・ARTとSCIENCEのバランス
「感性」と「論理」のバランスとも言い換えられ、どちらも大切だが、人々の心を動かすには、論理だけでなく、感性がより大切になっていく

・表層だけでなく、本質を理解する
ブランドの本質を理解した上で、細部に至るまで、一貫性のあるブランディングを実践することが重要である

・自分自身のことを客観的に知る
「メタ認知力」とも言い換えられ、エイクエントのエージェントが転職支援を行う中で、多くの企業からオファーを受ける人々には、メタ認知力が高いという共通の特徴がある

自分を客観視することはなかなか難しいことだと思いますが、ブランドを客観視する上でもあらゆるプロフェッショナルにとって大切な力と言えるのではないでしょうかと述べていました。

まとめ

自身の仕事に魂が宿っているかどうか、自分のブランドに本当に共感ができているのかどうか。それが見抜かれ、より伝わる時代に移り変わっています。時代の変化を楽しく受け入れ、新しい風に乗っていく姿勢が大切であるという意見が述べられました。


飯田 訓子 | Satoko Iida 氏
LANDOR
Design Director, Experience

世界最大のマーケティング・コミュニケーションズグループであるWPPグループで、業界を超えた様々な専門家とコラボレーションしながら新しいブランド体験の構築を行う。2020年、アジア太平洋地域のマーケティング業界で変革を担う女性リーダーを選出する「Women Leading Change Awards 」Creative Captain部門で優勝。2021、2022年日本最大のクリエイティブアワード ACCのブランデッドコミュニケーション部門審査員も務めている。


西願 真弓 | Mayumi Saigan
エイクエント・エルエルシー
Agent

神戸大学国際文化学部卒業。旅行会社勤務を経て、ロンドンのアートスクールでインテリアデザインを学ぶ。帰国後、都市プロデュース会社で空間プロデュースとまちづくりを経験。2006年にエイクエントに入社し、東京でブランディング・クリエイティブ領域を手がける。2012年からは名古屋を拠点にデザイン、デジタル、マーケティング領域の人材ソリューションを提供中。多彩な企業とプロフェッショナルのご縁をつなぐパートナーとして伴走を続けている。