私たちAQUENTはクリエイティブ・マーケティング・デジタル領域で活躍するプロフェッショナルの皆さまの才能を発揮できる機会を創出しており、学びやスキルアップの場をつくることで、クリエイティブコミュニティの活性化を支援しています。
今回は、事前に実施したアンケートにてクリエイターの方々からご質問・ご要望の多かった、生成AIの著作権問題や実践的な活用方法をテーマに「BOOSTERS(ブースター)」と呼ばれるオンラインイベントを開催。アドビ社よりエバンジェリストの仲尾 毅 氏をお招きし、Adobe Fireflyツールの機能をはじめとする、クリエイティブ制作におけるAIの組み込み方についてご紹介いただきながら、これからのキャリアの可能性について話し合いました。
この記事では、当日のセッション内容を詳しくお伝えします。
【BOOSTERS Contents】
● AIが変える、クリエイティブの現場(エイクエント:王堂)
● Adobe Creative Cloud と AI(アドビ社:仲尾氏)
・FireflyとPhotoshop、Illustrator、Premiere Proの連携
・商業利用における圧倒的な安全・クリーンへのこだわり
・徹底された学習データの透明性
・デジタルコンテンツの透明性
・Adobe Firefly最新情報
・リソース・学びの機会の提供
● AI時代におけるキャリアを考える(エイクエント:王堂)
AIが変える、クリエイティブの現場(エイクエント:王堂)
セミナーの始まりに、エイクエントのエージェント王堂波人より、いま、制作の現場で起きていることについてお話ししました。
AIの台頭により、生成AIを搭載したツールの活用は業務効率や表現力を飛躍的に向上させる不可欠なスキルとなりました。しかしその一方で、多くのクリエイターやマーケターが、具体的に実務のどの工程へどう組み込めばいいのか分からないという共通の壁にぶつかっています。さらに現場レベルでは、著作権や権利関係のクリア、クライアントワークとして納品できる品質の担保といった具体的な課題にも直面しているのが現状です。
こうしたクリエイティブ市場全体の悩みを解消するために、制作の現場で今まさに求められているスキルやテクニックを、具体的かつ安全に実務へ落とし込む方法について学ぶ機会が求められているとお話しました。
Adobe Creative Cloud と AI(アドビ社:仲尾氏)
王堂のイントロダクションに続き、仲尾氏がAdobe Creative Cloudツールの活用方法についてのセッションを行いました。
Adobeの提供する各種クリエイティブツールは、Adobeオリジナルの生成AIエンジンAdobe Fireflyとの融合により、近年、ワークフローのあり方を根本から変えつつあります。主要な各アプリでは、従来の複雑な手作業や他ツールとの往復を必要としない、強力なAI機能がシームレスに組み込まれています。
FireflyとPhotoshop、Illustrator、Premiere Proの連携
Photoshop:ワンタップの切り抜きから高度な画像調和まで

Photoshopでは、人物などの被写体をAIが自動認識して数秒で美しく切り抜く背景の削除に加え、合成のクオリティを飛躍的に高める調和(Harmonizer)機能が実装されました。
切り抜いた被写体を別の背景に配置した際、浮いて見えないよう、周囲の環境光や影の付き方をAIが解析し、自然になじむライティングへ自動で補正・生成します。また、商品写真などのオブジェクトをPhotoshop上で認識し、パースや遠近感を保ったまま角度を微調整する回転の編集機能も登場しています。
これらはすべて元画像を破壊しないマスクやレイヤーとして生成されるため、クライアントの目の前でリアルタイムにプレビューを見せながらコンセンサスを形成し、持ち帰ってから細部を追い込むといった、圧倒的にスピーディーな実務フローを可能にしています。
Illustrator:ベクターデータのまま自由な角度へ「ターンテーブル」

ベクターグラフィックを扱うIllustratorでは、新たにターンテーブルという革新的な生成AI機能が追加されました。従来、一度描き起こしたイラストの角度や向きを変更するには一から描き直す必要がありましたが、この機能を使えばAIが多角的な視点を予測し、異なる角度のベクターデータを自動生成します。
スライダーを動かすだけで直感的にオブジェクトを回転させることができ、生成されたデータもベクター属性を維持しているため、後からの編集や要素の削除も自在に行えます。
Premiere Pro:動画のオブジェクトマスクと生成延長

動画編集領域でもAIの恩恵は絶大です。映像内の動き回る被写体を自動でトレースし、1コマずつ切り抜く作業をワンクリックで完結させるオブジェクトマスクツールは、1秒間に何十フレームもある動画のカット編集時間を劇的に短縮します。さらに、撮影素材の長さが数秒足りないといった現場の窮地を救う生成延長機能も追加されました。
足りない部分の映像や被写体の動きをAIが予測して自然に動画を文字通り“延長”して作り出すため、静止画でゴマかしたり、別のインサートカットを挟んだりする手間を省き、ストーリー性を損なうことなく編集を成立させられます。
商業利用における圧倒的な安全・クリーンへのこだわり
生成AIの業務導入において、最も多くの企業やクリエイターが懸念する著作権と権利関係の課題に対し、Adobe Fireflyは市場で最も明確かつ安全な回答を示しています。
世の中の広告制作の大多数を支えるブランドとして、Adobe Fireflyは商用利用できるクリーンなコンテンツの作成を絶対の前提として設計されています。
徹底された学習データの透明性
他社の生成AIの中には、インターネット上のあらゆる画像を許諾なく学習させたことで権利侵害のリスクがあるものが少なくありません。しかし、Adobe Fireflyは学習データをすべて公開しており、著作権的に完全にクリアなデータのみから学習を行っています。
その中心となるのが、Adobeが保有するが約9億点に及ぶストックフォトサービスAdobe Stockの活用です。この中から、エディトリアルなどの著名人の写真を除外し、なおかつ生成AIの学習材料として明確に同意を得られた素材のみを厳選して学習させています。さらに、AIが生成したアセット自体に類似性がないかをチェックする専任のレビューチームを倍増し、他者の権利を侵害するリスクを日々徹底的に取り除いています。
また、学習元として協力したクリエイターに対してはボーナスという形で金銭的な還元を行うなど、クリエイターコミュニティの権利を守るためのクリーンなエコシステムを構築しています。
デジタルコンテンツの透明性
AI生成コンテンツがフェイクかどうかを見極めることが困難な時代において、アドビ社は世界5500社以上の企業やメディア、カメラメーカーと協働しコンテンツ認証イニシアチブ(CAI)をリード、デジタルコンテンツの来歴を証明する技術(C2PA仕様)を先導しています。これがコンテンツオーセンティシティと呼ばれるテクノロジーです。
Photoshop、Illustrator、Premiere、あるいはFireflyで作成・編集されたデータには、誰が、どのように作ったか、生成AIを使用したかなどという来歴情報が、画像や動画のファイル(JPEG、PNG、MP4など)に自動的に埋め込まれます。
これは食品の成分表示表のような役割を果たし、オープンな検証サイトにファイルを読み込ませることで、いつでも制作のプロセスや加工の履歴をオープンに可視化・確認できます。この仕組みに則ることで、制作会社もクライアント企業も、安心してエンドユーザーへコンテンツを届けることが可能になります。
Adobe Firefly最新情報
Webブラウザ上で動作するAdobe Fireflyは、常に最先端のテクノロジーが最初に実装される検証・実践の場です。現在、クオリティの向上とともに、クリエイターの表現の幅を広げる数々の最新機能が実装されています。
写真の維持と編集・動画の多言語翻訳(口パク同調)

最新のイメージモデルでは、プロンプトからゼロベースで画像を生成するだけでなく、既存の写真を読み込ませた上で自然な笑顔に変える、髪型や服装、看板の文字を変える、昼の景色を夜にするといった、元の被写体のアイデンティティを維持したままの高度な編集が自然に行えるようになっています。
また、動画内の音声を認識し、世界十数カ国の言語へ翻訳して喋らせる動画翻訳機能も登場。単に声を翻訳するだけでなく、話者の声の質を維持したまま、翻訳後の言語に合わせて映像内の口の動きまでAIが自動で同調・変形させるという驚異的なクオリティを実現しています。
マルチモデルの選択・サードパーティー連携
Firefly内では、アドビ社独自の安全なモデルだけでなく、用途に応じてサードパーティー(他社)の生成AIモデル(Luma、Runway、Pikaなど)へ切り替えて利用できるようになりました。
これにより、Fireflyの安心・安全な管理環境をベースに使いながら、他社の強力な画像・動画生成エンジンをシームレスに使い分けるという、これまでにない利便性を実現しています。
案件単位でチームと協働するFireflyボード

制作現場の生産性を爆発的に高める機能として注目されているのがFireflyボードです。1つの案件ごとにデジタル上のボードを作成し、アーティストのアセットや素材をインポートして、それらをベースに異なる背景やシチュエーションの広告バリエーションを連写式に何十パターンも生成・リミックスしていくことができます。
これからの時代、クリエイターに求められるのは、時間をかけて1つのものを作るスキルだけでなく、AIに制限なく大量のアイデアを出させ、その膨大なバリエーションの中から、案件の方針に沿った最適な表現を的確に選び抜く力です。
Fireflyボードで作成したストーリーボードは、右クリックでPremiere Proなどの動画編集アプリへ連携させることも可能です。また、共有ボタンからチームメンバーを招待すれば、1つのボード上で全員がディスカッションしながらリアルタイムに案件を進行させることができます。
対話型AIエージェント
現在は、対話型で直感的に指示を出せるAIエージェント(対話型エクスペリエンス)の開発も進んでおり、すでにPhotoshopのWeb版・モバイル版や、Adobe Expressにてベータ版を提供、日本語での対話操作が試せるようになっています。
リソース・学びの機会の提供
アドビ社では、こうした目まぐるしい技術革新をクリエイターが実務にいち早く落とし込めるよう、手厚い学習コミュニティを用意しています。
クリエイティブカレッジは、Adobe Creative Cloudメンバー向けに提供されている完全無料のオンライン講座です。Photoshop、Illustrator、Premiereの基礎から応用までを3ヶ月でじっくり学べる本格的なコースで、追加料金なしで受講可能です。
Creative Cloud道場(CC道場)は、エバンジェリストの仲尾氏がホストを務め、毎週木曜日の夜20時からYouTubeでライブ配信されているストリーミング番組です。13年にわたり継続されており、過去600本以上のアーカイブ動画では、第一線で活躍する様々なクリエイターのリアルなテクニックや思考プロセスを学ぶことができます。
AI時代におけるキャリアを考える(エイクエント:王堂)
アドビ社の仲尾氏によるデモンストレーションでは、これまで数時間、あるいは数日かかっていた作業が一瞬で形になっていく圧倒的なスピード感を目の当たりにしました。しかし、ここで私たちが認識すべきなのは、これは時短テクニックではないということです。
AIによってどう作るかのスピードが劇的に上がった分、これからのクリエイターやマーケターには、なぜそれを作るのかという明確な目的意識、そして膨大な選択肢から最適なものを決断し、最終的な品質をコントロールする力という、クリエイティブの本質的な能力がこれまで以上に求められるようになります。
スキル重視へシフトする企業の採用要件
現在、企業の採用現場では明らかな変化が起きています。これまではAIに関心があるというレベルで評価されていたものが、最近の求人票ではAIを「実務に活用できること」という文言が、具体的な必須・歓迎要件として並び始めています。
それは、AIの存在を知っている・触ったことがあるだけでは不十分な時代に突入したと言えます。AIを使って何を実現し、どのように成果物のクオリティを担保したかという具体的な実践プロセスを、自身の言葉でロジカルに語れるかどうかが、今後の市場価値を左右する決定的なポイントになります。
AI時代を生き抜く2つのキャリアパス
セッションで紹介したAIの活用手法を自身のキャリアにどう組み込んでいくべきか、目指す方向性によって大きく2つの道が存在します。
ストラテジストとしての道
AIを強力な武器として捉え、制作フロー全体の仕組み化や、上流のマーケティング戦略を設計するポジションです。膨大なアイデア出しやシミュレーションをAIで行いながら、どの切り口であれば関係各所とスムーズにコンセンサスができるかというプロセスそのものをリードする力が求められます。
制作スペシャリストとしての道
AIという最新ツールを極限まで使いこなし、圧倒的な表現精度とスピードを追求するポジションです。ただし、AIのアウトプットを鵜呑みにするのではなく、このプロジェクトの目的に対して、本当にふさわしいデザインかを見極める審美眼と、高度なレタッチ・編集技術が必要となります。
自分がどちらの価値で勝負し、市場から評価されたいのかによって、AIツールの学び方や活かし方は変わってきます。まずはどのようなクリエイター・マーケターを目指したいかという自身の目的を、改めて見つめ直すことが大切になっていくでしょう。
まとめ
今回のウェビナーでは、Adobe Fireflyの実践的かつ安全な活用法をご紹介し、AI時代に求められるスキルやキャリア設計についてお伝えさせていただきました。AIの台頭によって制作のプロセスが高速化した今、企業の採用現場ではAIを実務に活用できることが具体的な要件になりつつあります。
これからのクリエイターやマーケターに求められるのは、制作のスピードだけではなく、なぜそれを作るのかという目的意識と品質をコントロールするスキル。今回のウェビナーが、多くのクリエイターにとって、自身のキャリアを見直すきっかけの一助となれば幸いです。
これからもAQUENTでは、様々な企画を通し、皆さまのキャリアアップを支援させていただきます。目まぐるしく変化する今の時代を生き抜くためのキャリア戦略でお悩みの方は、キャリア相談会へお気軽にご参加ください。
【登壇者】

アドビ株式会社
Creative Cloud エバンジェリスト
仲尾 毅 (Tsuyoshi Nakao) @tsuyon
上智大学理工学部電気電子工学科卒業後、プロビデオシステムエンジニアとしてキャリアスタート。その後Apple Disability Center、UMAX、Visio、Microsoft MacBU と、IT系ハード・ソフトベンダーで一貫してプロダクトマーケティング業務に携わる。
2012年6月、Adobe 入社
Creative Cloud伝道師として、Adobe の最新技術、製品、サービスの訴求と移行促進に従事。クリエイティブ&テクノロジーの力で世界が変わると ’マジ’ に信じ、願い、実行することがライフワーク。
木曜夜8時 Creative Cloud 道場 on YouTube Live 開講中 #CCDojo

エイクエント・エルエルシー
エージェント
王堂 波人 (Namito Odo)
香港のカナダ系インターナショナルスクールを経て、中央大学卒業。その後リテール業界で店舗マネジメントと責任者経験を積む。2022年にエイクエントに入社し、クリエイティブ・マーケティング・デジタル領域のスペシャリスト派遣・業務委託契約を担当。現在は外資系エンタープライズ企業の支援を中心に、AI導入が進むクリエイティブ現場の変革を人材とキャリアの観点からサポートしている。