AQUENTでは、クリエイティブ、デジタル、マーケティング分野における人材の獲得、育成、定着に関する課題やトレンドを共有し、これからの「採用のカタチ」を共に見出す目的で、HRリーダーの方々を対象としたイベントを東京にて開催いたしました。
今回は、ゲストスピーカーとして、株式会社ユーザベース 上席執行役員 CHRO 松井 しのぶ 氏をお迎えし、パーパス&バリューに基づくユーザベースの人事制度についてお話しいただきました。
【プログラム】
ハイパフォーマーを惹きつけるためのヒント(エイクエント・エルエルシー 杉本 隆一郎)
パーパス&バリューに基づくユーザベースの人事制度(株式会社ユーザベース 上席執行役員 CHRO 松井 しのぶ 氏)
・ユーザベースの根幹となる原則
・採用の3つの誓い
・リファラル採用やオンボーディングの重要性
懇親会の様子
まとめ
ハイパフォーマーを惹きつけるためのヒント
エイクエント・エルエルシー 杉本 隆一郎

冒頭では、当社エイクエント・エルエルシーの杉本 隆一郎より、近年の日本の採用市場において、優秀な人材を獲得するために企業はどのような取り組みが必要なのか、変わりゆく採用について、次のようなインサイトをお伝えしました。
「採用市場において、特にクリエイティブ・デジタル・マーケティング領域では、DXの推進やAIの進化により新たな職種が増加しています。
一例をあげると、UX/UIデザイナーのようにより専門性が求められる他、AI監査に関わる職種なども増えてきています。その結果、経験者の人材獲得競争が激化し、経験者が採用できない場合には未経験者を採用して育成する必要性が高まっており、人事採用部門には多様な採用形式が求められています。
また、ワークスタイルの現状として、コロナ禍以降、オフィス復帰を促す動きが見られます。しかし、クリエイティブ領域に従事する人々は、オフィスで行う業務と個人で行う業務を使い分ける傾向が強く、リモート環境での就業を好む傾向が続いています。
このため、企業においては営業部門や管理部門など異なる業務が存在する中で、クリエイティブ職のリモート志向が根強く残っています。
さらに給与について、私たちは年に一度サラリーサーベイを実施しています。この調査によって職種ごとの給与水準の上昇や地域による上昇幅の変化を把握することができます。今後も、こうした調査結果を含め、優秀な人材を採用するための有益な情報やソリューションをお届けしてまいります。」と述べておりました。
パーパス&バリューに基づくユーザベースの人事制度
株式会社ユーザベース 上席執行役員 CHRO 松井 しのぶ 氏

「『日本を元気にしたい』が私の最近のミッションです」と語る松井氏。
現在CHROとして人事を統括しているユーザベース社の「パーパス&バリューに基づく人事制度」について次のようにお話しいただきました。
ユーザベースの根幹となる原則

「ユーザベースでは、『50人の壁』に直面した2012年に、企業にとっての共通の価値観を軸とする『7つのルール』を言語化しました。その後『バリュー』といった言葉に置き換えて現在に至ります。
その際にこだわったのは、言葉の重要性。コピーライターを起用し、言葉に宿る力や、覚えやすさを意識し、心に残るフレーズを使用しています。
さらに、社員が200人を超えた上場直前の頃に、『34の約束』を制定し、組織の大切にする行動を『Do』と『Don‘t』で定義しました。これは、7つのバリューが抽象度の高いものとなる中で、社員が具体的にどのような行動をとるべきかの必要性から生まれたもので、社内の意見を反映させて形成されました。また、『34の約束』はそれぞれのバリューに基づいてカテゴライズされています。

より大事なのは『Do』ではなく『Don’t』。基本的に『Don’t』をしなければ、それ以外は自由に行動できるという感覚を持っています。そして、『Don’t』を定めることで、より自由に動ける幅が広がると考えています。ユーザベースの根幹原則は、パーパスとバリューであり、我々が頻繁に言及するのは、トップは社長ではなく、パーパスとバリューを最も体現できる人がその時の状況に応じてトップにふさわしいということです。」と松井氏は語っていました。
採用の3つの誓い
「採用は全体の8割。どれだけ強固な組織文化を持っていてもエントリーマネジメントを誤ると、組織はネガティブな方向に振れてしまうので、どれだけここに強度を持てるかというのが重要だと思っています。」と語る松井氏。
ユーザベース社「採用の3つの誓い」について、次のように述べられていました。
「バリュー > パーパス > スキル」の順で判断する

「採用の判断基準の1つ目は『バリュー > パーパス > スキル』の順であり、スキルが優れていてもバリューに合わない人物は採用しない方針です。
しかし、現場では即戦力を求める傾向があるため、採用が難しい今の状況では特に優れた人材を選びたくなる場合があります。そのあたりは、バリューの評価を確実に行うために『バリュー面接』を取り入れるなどして、他部署の人員も加え、バリューをしっかり見極める意識を共有しています。
バリューがパーパスよりも先に置かれているのはなぜか。
長年生きてきた中での価値観は簡単には変わらないため、採用の際に懸念を感じた要素は99.9%の確率でリアライズすることが経験からわかっています。
したがって、誰か一人でもバリューに対する不安があれば、面接に関与した全員で徹底的に議論するプロセスを踏んでいるのです。」
自分を越えそうな人を採る

「2つ目は自分を越えそうな人を採る。ユーザベースでは、人事が全社一括で採用するのではなく、部門別でチームに実際入ってほしい人を面接するスタイルをとっています。
チームを形成する際には、居心地の良い人を選ぶのではなく、既存のメンバーにはない才能や異なるスキルを持った人材を活かす必要があるため、自分を超えている、またはその可能性を秘めた人を選ぶことを心がけています。」
合否決定を他責にしない

「3つ目は、合否決定を他責にしないこと。実際入社してみると思ったように活躍できなかったということは往々にしてあります。その時『実は私は反対だった』とか、そういうことは絶対言わないこと。
期待値が異なっている場合でも、相手を育成しながらオンボーディングを行うことが重要で、万が一それが難しい場合には、エグジットマネジメントも含めて適切に対処することが求められます。」
リファラル採用やオンボーディングの重要性
「当社ではリファラル採用にも力を入れています。リファラル採用はバリューがマッチしている人を紹介されるケースが比較的多いので、定着率が高いことが特徴です。
また、入社後のオンボーディングも重要であると考えています。採用が8割でオンボーディングは残りの2割。当社でも1年以内の退職率が高くなってしまった時期がありました。原因は期待値のギャップにあると考えています。
もちろん、オファー面談では、企業が求職者に対して包み隠さず良いことと悪いことを伝えることが前提なのですが、入社時に『入社ウェルカムスライド』を作成し、新入社員が入社後の3か月で達成してほしいことや期待される姿を明示して初日に渡す取り組みを行っています。このような情報提供により、実際に退職率が低下する効果が見られました。」と松井氏は語っていました。
懇親会の様子

懇親会では、来場された企業の皆さまが、それぞれの課題や取り組み、採用についての意見を交換し合いました。

まとめ
これからの採用は、これまでの定型的なプロセスから脱却し、より柔軟で多様な方法に進化していくことが予想されます。今回のイベントが皆さまの採用活動の一助となりましたら幸いです。
ご参加いただきました皆さま、本当にありがとうございました。
これからもAQUENTでは、多くの企業の皆さまのニーズお応えするべく、様々な情報をご提供させていただきます。
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【登壇者】

松井 しのぶ 氏
株式会社ユーザベース 上席執行役員 CHRO
公認会計士。EY新日本有限責任監査法人を経て、PwC税理士法人で国際税務のコンサルティングマネージャーに従事。2014年ユーザベースに参画し、人事・総務・法務などをはじめとするコーポレート全般を広く担当。また、IPOやM&Aなどユーザベースにおける各種コーポレートプロジェクトをリード。
2018年より、執行役員として、コーポレートを統括。2021年から2023年2月まで取締役を務めた。2023年よりCHROとして人事を統括。