プロダクトデザイナーは、世の中に存在する数多くの製品をデザインする職種です。プロダクトデザイナーに興味があっても「他のデザイナー職とどのような点で異なるのか」「求められるスキルは何か」と疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、プロダクトデザイナーの仕事内容や求められるスキル、年収について解説します。
プロダクトデザイナーとは
→ インダストリアルデザイナーやUI/UXデザイナーとの違い
プロダクトデザイナーの仕事の流れ
→ 1.新製品の目的を理解する
→ 2.市場調査とコンセプト立案
→ 3.製品のラフ画を作成
→ 4.関係者とミーティング
→ 5.模型や3DCGを作成
→ 6.最終デザインの決定
プロダクトデザイナーに必要なスキルと経験
→ デザイン力
→ グラフィックツールの使用経験
プロダクトデザイナーに向いている人
→ コミュニケーションスキルが高い
→ マーケティング戦略が練れる
プロダクトデザイナーになるにはどうしたらいい?
→ 大学や専門学校で学ぶことが一般的
→ 未経験でプロダクトデザイナーは難しい
→ プロダクトデザイナーになるために資格は不要
プロダクトデザイナーとは
プロダクトデザイナーとは、身近に存在する家具や家電製品・雑貨・時計・文房具といった身の回りの生活用品から自動車や飛行機など、世の中で販売されているあらゆる種類の製品をデザインする職種です。
インテリアデザイナーやWebデザイナーなどのように、特定の対象のみをデザインする仕事ではなく、「プロダクト=製品」をデザインするという観点で、ものづくりの対象が多岐にわたるという特徴があります。
プロダクトデザイナーは、デザイン会社や広告代理店に勤務しクライアントから外注されたデザインを作成するケースと、メーカー(製造業)などの事業会社のインハウスデザイナーとして製品デザイン部門に就職し、社内のデザインを作成するケースの2つに分かれることが一般的です。
デザイン会社に勤務した場合は、さまざまな企業の製品に携わることが魅力です。メーカー勤務の場合は自社製品のみしかデザインできませんが、デザイン会社より労働条件がいいケースも多い傾向にあります。
インダストリアルデザイナーやUI/UXデザイナーとの違い
プロダクトデザイナーと混同されやすい職種として、インダストリアルデザイナーとUI/UXデザイナーがあります。
インダストリアルデザイナーは、工業デザイナーです。プロダクトデザイナーが、さまざまな製品のデザイナーの総称であるのに対して、インダストリアルデザイナーは機械製品や工業製品のデザイナーのみをさしています。
UI/UXデザイナーは、ユーザーにとって使用感のいいアプリやWebサイトをデザインする仕事です。IT企業のなかには、アプリやWebサイトをプロダクトと表現することがあるため、UI/UXデザイナーをプロダクトデザイナーとよぶことがあります。
プロダクトデザイナーの仕事内容
プロダクトデザイナーの仕事内容としては、ただ単にデザインを作成するだけではなく製品に関するマーケティングの実施から設計やプロダクトの立案、企画開発といったように業務の範囲は非常に広いといえます。
時にはクライアントの担当者との打ち合わせに同席し、先方の要望をヒアリングしてそれに基づいてコンセプトを作ることもあるため、社内だけではなく社外の人間とのやりとりも仕事内容に含まれます。
プロダクトデザイナーの仕事の流れ
プロダクトデザイナーの仕事の流れを5つの工程に分けて説明します。
1.新製品の目的を理解する
まず、プロダクトデザイナーは、クライアントや自社の商品企画者とミーティングを行い、以下の内容について理解を深めます。
- 製品に盛り込む機能
- 想定しているユーザー層
- 製品の方向性
これらは、製品をデザインする際の土台となる重要な部分です。最初の段階で製品の目的をしっかり理解し、どのようなデザインが求められているかイメージをふくらませます。
2.市場調査とコンセプト立案
新製品のデザインを市場のニーズに適合させるために、市場調査を行います。市場調査を通じて、対象ユーザーの好みなどを確認します。競合他社が類似の製品を出している場合は、製品のデザインやユーザーの反響の調査も欠かせません。市場調査で得た情報をもとに製品のコンセプトを立案し、形状などを考えます。
3.製品のラフ画を作成
製品のコンセプトが固まったら、ラフ画に描き起こしていきます。プロダクトデザイナーは、平面のデザインだけでなく、3Dの立体的なデザインのラフ画を描かなくてはいけません。奥行きを考えながら全体のデザインや細かいパーツを描いていきます。
製品の売れ行きをデザインが左右することもあるため、スタイリッシュな見た目やユーザーに使い勝手のいいデザインを心がけることが大切です。また、ラフ画の段階で安全性や機能面、素材などについても考える必要があります。この段階で大量のデザイン案を作成することが多いです。
4.関係者とミーティング
ラフ画が完成したら、クライアントや社内の商品企画者、設計士、技術者、営業担当者などとミーティングを行い、意見を交わします。対象ユーザーの年齢層や趣味嗜好にデザインが合っているか、色や形、タイポグラフィは適切かなど幅広い視点でチェックします。
関係者から出た意見やアイデアをもとにラフ画を修正し、よりよいデザインを追求します。
5.模型や3DCGを作成
デザインが決まってきたらラフ画を清書し、立体的な模型や3DCGを作ります。プロダクトデザインの模型作りは3Dプリンターを使うことが一般的になりつつありますが、手作業で制作する有名日本人プロダクトデザイナーもいます。
模型によって完成イメージがよりわくようになるうえ、使用感や印象を体感することも可能です。
6.最終デザインの決定
模型などをもとに、関係者と以下について確認し最終デザインを決定します。
- 製品化できるデザインか
- 量産できるか
- 機能性は備わっているか
- 安全性に問題はないか
- デザインとして美しいか
- コスト面は予算内か
- 使いやすいか
これらに問題のないことが確認できたら、設計担当者が設計します。
プロダクトデザイナーに必要なスキルと経験
プロダクトデザイナーに求められているスキルと経験を紹介します。
デザイン力
プロダクトデザイナーはデザイナー職のひとつであるためデザイン力やデザインセンスが求められます。扱う製品の種類が多く、クライアントの要望に沿ったうえで市場に受け入れられるデザインを作成しなくてはいけません。デザイナー職の中でも高いデザイン思考とセンスが必要です。
とくに、物体の構造や形状を理解し絵に描き起こす力は大切です。見えない部分をデッサンで表現するスキルは必須といえます。
グラフィックツールの使用経験
「CAD」や「Adobe Illustrator」、「Adobe Photoshop」といったデザインを作成するうえで必須ともいえるグラフィックツールやソフトの機能理解と使用経験は欠かせません。
ラフスケッチを作成する場合に手で紙にデザインを起こすこともありますが、大抵の場合はWeb上でデザインを作成することになります。グラフィックツールは当たり前のように使用することになるため、自分の手足のように使えるぐらいの知識があるといいでしょう。
プロダクトデザイナーに向いている人
プロダクトデザイナーは、デザイナーに共通して求められるスキルに加え、プロダクトデザイナーならではの資質を兼ね備えている必要があります。プロダクトデザイナーに適性のある人の特徴を紹介します。
コミュニケーションスキルが高い
プロダクトデザイナーはさまざまな人と関わる仕事です。社外のあらゆる業種のステークホルダーと打ち合わせを行ったり、ディレクターやプロデューサーなどとチームを組んで仕事を行ったりすることが多いため、高いコミュニケーションスキルが求められます。
クライアントの要望をしっかりとヒアリングし、それをデザインに落とし込み提案を作る必要があります。しっかりとコミュニケーションが取れなくては要望に応えることができず、苦労してしまうでしょう。
また、デザイン部門だけではなく製品を完成させるまでの流れの中で、生産や流通部門のスタッフとも協議する機会が多く、社内コミュニケーションもとても大切です。
マーケティング戦略が練れる
デザインを作成するうえで、どのようなターゲットにどのようにアプローチするかといったマーケティング戦略はプロダクトデザイナーに求められるケースが多いです。市場のトレンドやユーザーニーズをくみ取る力があれば、向いているといえます。デザイナー職の中で、マーケティングスキルまで求められるケースは少ないですが、その分やりがいのある職種です。
プロダクトデザイナーの年収
プロダクトデザイナーの年収は実務経験や実績、勤務地によって変わってきますが、クリエイティブ系の業界の中では比較的高い部類だといえます。
エイクエントのプロダクトデザイナー求人の平均年収はおおよそ500万円〜900万円です。大手企業でスキルの高い正社員のプロダクトデザイナーや、マネージャーとして活躍している方は年収が1,000万円を超えることも珍しくありません。
プロダクトデザイナーになるにはどうしたらいい?
プロダクトデザイナーになる方法について解説します。
大学や専門学校で学ぶことが一般的
プロダクトデザイナーになるには、大学や専門学校などで知識や技術を学ぶ方法があります。大学によっては、プロダクトデザインや人間工学の専攻が可能です。海外の芸術大学に留学して、世界的なプロダクトデザイナーを目指す方もいます。専門知識を学べば、新卒で大手メーカーや有名制作会社に入社し、プロダクトデザイナーに就く可能性が高まります。
未経験でプロダクトデザイナーは難しい
プロダクトデザイナーは未経験であっても採用されるケースはありますが、実務経験や高いデザイン力、コミュニケーション能力が必要となるため、すごい狭き門といえます。今後、未経験で採用されるためには、デザインの専門学校で経験を積むなどしたうえでしっかりとしたポートフォリオを提示できるといいでしょう。
プロダクトデザイナーになるために資格は不要
プロダクトデザイナーになるために資格は必要ありません。役立つ資格は、公益社団法人日本インダストリアルデザイナー協会の「プロダクトデザイン検定」や全国美術デザイン教育振興会の「色彩検定」があります。また、アドビ認定プロフェッショナルなどの資格を取得しておくと、スキルやモチベーションの高さが考慮されます。
資格取得でスキルを伝えたい方や学び直しをしたい方は資格取得もひとつの方法です。ただし、プロダクトデザイナーは実務経験が求められる職種です。そのため実務経験を積むか、未経験者はポートフォリオ作成に注力するほうがいいと考えられます。
プロダクトデザイナーのキャリアパス
プロダクトデザイナーのキャリアパスは、マネージャーになるほか、転職や副業、独立があります。プロダクトデザイナーは、5年ほど会社で経験を積んだ後、マネージャーとしてキャリアアップするケースが多いです。マネージャーに昇格すると、チームメンバーの管理や制作管理などが任されます。
また、より条件のいい会社に転職するケースが少なくありません。「指示を受けて制作するだけでなく自分のアイデアを活かしたい」「多くの人の目にふれる製品をデザインしたい」と考えている方のなかには、企画から参加できる会社や規模の大きい会社に転職することがあります。
プロダクトデザイナーは在宅でできる工程があるため、副業をされる方もいます。個人でデザイン事務所を起ち上げる若手起業家となったり、30代でフリーランスとして独立したりする方も多いです。
プロダクトデザイナーの将来性
プロダクトデザイナーの将来性は期待できると考えられます。プロダクトデザインは製品の機能性を視覚化し、類似製品との差別化をはかる手段だからです。
経済産業省の「デザイン政策」の『Ⅰ デザイン政策の推進』によると、デザインは、コンセプトや品質などを視覚的かつ簡潔に表すための重要な手段としています。また、国際競争が激化している分野や技術成熟度が高く差別化の難しい分野は、戦略的にデザインを活用したほうがいいと述べられています。
製品におけるデザインの重要性の高まりを受けて、将来的にもプロダクトデザイナーの需要は伸びていくと考えられでしょう。
参考:経済産業省|デザイン政策
まとめ
プロダクトデザイナーは、求められるスキルが高く関わらないといけない人の数も多いため、転職のハードルは比較的高めですがその分給料も高いケースが多く、デザイナー職の中でも人気が高い職種です。
未経験から中途採用やキャリア採用で転職できるケースが少ないため、デザイン会社などでしっかりとデザイン業務の実践経験を積むことをおすすめします。
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