【目次】
・成長を可視化する:スキルマッピングの力
・日常業務に学習を取り入れる
・進歩を妨げる悪い習慣
・学びと成長の文化を維持する
何かを学んだ瞬間に、すでにその内容が古い情報になりつつある。それが、今の職場ではないでしょうか。
研修に割く時間がない。研修コースが導入された途端に、そのコンテンツは古くなってしまい、従来の指導方法は効果を失ってしまう。その上、企業は生き残りをかけて奔走しており、仕事量、予算の削減、納期の短さなどから、多忙なチームが立ち止まって学ぶ時間がない・・・このような悩みを抱える企業は少なくありません。
そのため、エイクエントが主催するデザインリーダーコミュニティ、InsideOutに参加するリーダーたちは、最近のラウンドテーブルで「学びの文化の醸成」を優先すべきディスカッショントピックとして選びました。そこから、リーダーたちの役割は学習体験を組み立て、イノベーションを支援し、インスピレーションを呼ぶ役割へと進化していることが見えてきました。
今日のリーダーは、どのように研修の代わりに学びの文化を醸成すべきなのか、というトピックについて一緒に紐解いていきましょう。
Key Takeaways
- 昔ながらの研修メソッドは、内容や時間の制約によって時代遅れになってきている
- 今の時代を生きるリーダーたちは、学習体験を組み立てる言わばキュレーターとして行動すべきである
- スキルギャップを可視化することで、専門知識とビジネス目標をすり合わせることが可能になる
- 教育を日常業務に組み込むことで、社員のエンゲージメントと適応力が高まる
- 古い習慣をアンラーニング(学習棄却)することは、新しいスキルを身につけ、成長することにつながる
成長を可視化する: スキルマッピングの力
このような取り組みを成功させるためには、リーダーたちはまず、現在の仕事、および将来的にビジネスの成長を実現する仕事を遂行するために、チームが必要とするスキルに沿った指導を行わなければなりません。育成計画の策定は、組織のニーズとチームの能力や関心の両方を理解することから始まります。
コミュニティに属する複数のリーダーは、ステークホルダーとの関係を深める機会としてアップスキリングを活用し、目標や現状とのギャップについて理解することで、求められている成果を生む計画を策定していることを紹介していました。つまり、必要なコンピテンシーを示し、それに対するチームの経験を照らして検討するのです。
ひとつの具体的な方法として、単純なスプレッドシートを作成し、1行目にスキル、1列目にチーム・メンバーを配置し、各チームメンバーの専門知識を1から4までランク付けして、個人の成長の機会とチーム全体の不足を示すことが挙げられました。また、Figmaのようなデザインツールを使って、現在のスキルと必要なスキルを視覚的に重ね合わせる方法もあります(Figmaが自社のデザインチームを構築するために行ったように)。リーダーたちは、パフォーマンス管理、1対1のミーティング、チームディスカッション、育成予算を確保するための経営幹部や財務パートナーとのミーティングなどで、これら可視化したデータを活用することができます。
このようなメソッドを使うことで、リーダーたちは補完的なスキルを持つチームメンバー同士をグループ分けしたり、専門知識を持つメンバーを見出して、その知識を他のメンバーと共有したりすることができるようになります。何かを学ぶ最善の方法はそれを教えることである、とよく言われていますが、その実践をするということです。
多くのデザインリーダーたちは、プロフェッショナルの育成において現状を可視化し、仕事そのものを向上させる方法を模索しているのです。
日常業務に学習を取り入れる
時間を要するとはいえ、社員がサポートを必要としている領域を発見することは難しくはありません。しかし、既に日々の業務で忙しくしているチームメンバーや、すぐに結果を求めてくる経営陣や協力部署と共に計画を実行に移すのは大変です。そこで、わたしたちのラウンドテーブルに参加したリーダーたちから、学びの文化を取り入れる利点についていくつかのヒントを教えてもらいました。
まずは、効果的で手のつけやすいアイデアから始めるということ。
昼食をとりながら行う「ランチタイムラーニング」は、特に社員の孤立が進み、ワークグループ間のズレが顕著になっている今、有効な取り組みではないでしょうか。チームメンバーを巻き込み、組織横断的にコラボレーターを集めて、共有会や何でも質問できる機会を設けることで、成果を上げることができます。あるリーダーは、外部のベンダーにケーススタディや技術・トレンド情報を提供してもらうことが効果的だったと強調していました。
予算が許せば、チームメンバーをカンファレンスに参加させるのも良いでしょう(無料のものもあります)。そして、学んだことを共有させ、チームの知識やプレゼンテーションのスキルを高めていきます。
あるリーダーは、四半期に一度、8時間自由に学習することに費やせる「プロフェッショナル・ディベロップメント・デー」を取得することに支持を得たそうです。これがとても効果的だったため、他のチームにも浸透していったと言っています。
また、定期的にクリエイティブ評論会を開催するなどの施策は、業務に焦点を当て、フィードバックの授受や批判的思考など、ハードとソフト両面のスキルをスタッフに教える機会につながります。
育成を促し、インスピレーションを共有するために、SlackやTeamsのようなデジタルチャネルの力も忘れてはいけません。
例えば、競合のデザインワークを紹介し、あなたのチームがそれをどのように改善するかを尋ねたり、競合分析を共に行ったりするなど、外部の見解をこういったチャネルを通じて共有することで、新鮮な視点が生まれ、潜在的なビジネス上の利益を発見することができます。
別のリーダーの例によると、チームメンバーに学びたい専門分野を特定するよう指導したそうです。高等教育の副専攻の考えと同じように、社員は現在の職務を補完する副次的な分野を選択し、実践的な知識を広げていきます。
リーダーたちは、観察や率直な会話を通じて、チームメンバーから直接インスピレーションを引き出すことを推奨しています。これは、社員の学習意欲を高める真のニーズを活用するものです。
進歩を妨げる悪い習慣
ある優秀なリーダーが指摘していたのは、新しい規範を確立する際には「アンラーニング」も同様に重要であるということ。急速に進化するテクノロジーや重要なスキルを習得するためには、チームはまず、慣れ親しんだ慣習を手放さなければならないのです。言うは易く行うは難し、というのが現実です。
わたしたちのラウンドテーブルにて、シニアリーダーたちは、学びの文化の構築には経営幹部、パートナー、チームメンバーなどの賛同が不可欠であり、それが変革への努力を左右すると指摘しています。
さらに強力なのは、カジュアルなラーニンググループを結成すること。これにより課題を素早く発見し、進歩を加速させることができると述べています。
例えば、あるリーダーは、インクルーシブデザインに熱意を持つ175人の従業員を集め、探索する機会を提供しました。こうすることで、探索のプロセスを単なるToDoリストの項目ではなく、楽しいものにすることができたと言っています。
リーダーたち自身も進化しなければならず、そのためにはサポートが必要であることを忘れてはなりません。
チームのリーダーになることは、忙しさに翻弄されるマネージャーにさらなる要求を突きつけるものであり、マネージャーの多くは自らも変化についていくのに必死なのです。
現代のリーダーたちは、明確な期待値を示し、模範を示す以上のことを求められています。コーチングのテクニックを活用し、チームメンバーやパートナーに指標を示し、スキルの習得を可視化しつつ不可欠なものにする。言わば、学習環境のオーケストレーターにならなければなりません。人材育成のための予算と時間を確保することは、柔軟で効率的、かつ意欲的なチームを作りたいと考えている組織にとって、最初のステップです。それができなければ、組織の成長は時代遅れの慣行や考え方によって妨げられていくでしょう。
学びと成長の文化を維持する
学習は決して一度きりで終わるものではありません。優先的に取り組まなければ、道半ばとなり、チームの不満や生産性の低下につながります。
先見の明のあるリーダーたちは、独創的でインスピレーションを与える方法で社員がスキルを習得できる機会を模索し、学習を雑務ではなく体験化することで、常に進化できる環境を整えています。
デザインリーダーたちは、創造力、会話力、提唱力、探求心、共創力などを駆使することで、組織全体をまとめ、その能力を強化できます。イノベーションの推進者として、共感と包容力をもって変化をもたらします。環境、時間、予算があれば、こうしたリーダーは成長を可視化し、探求心を根付かせ、進歩を妨げる悪い習慣を断ち切ることができるのです。
競争が激化する今日のビジネス環境では、停滞したスキルセットは不利なだけでなく、負債となり得ます。埃まみれの研修マニュアルを捨てて、学びの文化を醸成することが、あなたのビジネスの未来を築いていくのです。
「InsideOut」は、エイクエントが運営する、先進的なブランドのインハウスチームのシニアデザイン、エクスペリエンス、クリエイティブ・オペレーション・リーダーが集まるコミュニティです。メンバーの学びと成長をサポートするため、小規模なラウンドテーブルを開催しています。
【著者について】

Susie Hall(スージー・ホール)
コミュニティ&カスタマーエンゲージメント担当プレジデント
スージー・ホールは、Aquentのコミュニティ&カスタマーエンゲージメント担当プレジデントです。1999年にインタラクティブ・エージェントとしてAquentに入社したのち、21年にわたり、地域のチームを率い、強固なインタラクティブデザイン事業を展開。2011年には、代理店や中堅企業の急速に進化するデジタル人材ニーズに対応するため、Vitamin Tブランドを立ち上げました。ベスト・オブ・スタッフィング・サービス賞を15回受賞し、豊富な人脈を築いてきた彼女は、クリエイティブ、デザイン、リーダーシップへの深い理解を持ち合わせています。2019年、ホールはAquentのInsideOut デザインリーダーシップコミュニティを立ち上げ、現実的な課題に基づくピアディスカッションを通じて、有名ブランドのシニアインハウスデザイン、エクスペリエンス、オペレーションリーダーのつながりを醸成しています。
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