【目次】
エージェンティックAIとは:AIへの新たなアプローチ
増えている活用事例
・カスタマーサポート
・企業のワークフロー
・サイバーセキュリティ
・財務計画
・サプライチェーン
今こそ準備を
・データを整備する
・組織の体制を整える
・規律を守り活用する
・使用するモデルを選択する
まとめ
Key Takeaways
- エージェンティックAI(Agentic AI)は、ビジネスのあり方を急速に変えていく力を持った次世代型AI技術です。
- AIエージェントは、従来の生成AIのプロンプト&レスポンスというモデルを脱し、複雑な問題を解決し、戦略を立て、意思決定を行い、行動を適応させるために自律的に行動することができます。
- 多くの企業はまだ生成AIの導入を始めている段階かもしれませんが、エージェンティックAIの到来に備え、今から準備を始めるべきでしょう。
多くの企業がそうであるように、みなさんの会社も、いくつかの生成AI機能のパイロット運用や概念実証を実施中で、新たなテクノロジーをどのように利用できるかを確認していることでしょう。
しかし、そろそろ生成AIの世界に足を踏み入れても大丈夫だろうと思っていた矢先に、エージェンティックAIが登場しました。この次世代型AI技術は、フォレスター・リサーチ社のアナリストが2024年の新興テクノロジー・トップ10に挙げており、ガートナー社のアナリストは2025年の戦略的テクノロジー・トレンドの第1位に挙げています。
では、何が大きく変わるのでしょうか?前世代のAIは、データのパターンを認識・分析して予測を立てていました。生成AIでは、大規模な言語モデル(LLM)が人間からのプロンプトを受け取り、それに応じて単語、画像、動画などのコンテンツを作成しています。これは現代のビジネスに欠かせないものとなることが予想されますが、AIが独自に行動するにはまだ限界があるのです。
エージェンティックAIとは:AIへの新たなアプローチ
エージェンティックAIは、従来のモデルやシステムを脱し、人間の介入をほとんど必要とせず、独立して行動し、複雑な問題を解決し、目標に到達することができます。AIエージェントは、自律的に推論し、反復的に計画を立て、変化に適応し、周辺環境と対話し、そこから学び、他のAIエージェントと協力し、データを分析し、予測を立て、戦略を立てることができるソフトウェアプログラムなのです。AIエージェントは独自のプロンプトを作成することができます。
マーケティング活動のために新製品の説明文を考えるよう、生成AIシステムに要求した場合、どうなるでしょうか。エージェンティックAIシステムは、市場データを分析し、ターゲット層、パートナー、予算配分を含むマーケティング計画を立案し、計画を立ち上げることをミッションとして与えられることになります。
すべてのAIエージェントが同じように機能するわけではありません。例えば、単純な反射型エージェントは、基本的に周囲の環境からのインプットを吸収し、感知したことに基づいて意思決定を行います。また、探索や計画アルゴリズムで武装したエージェントは、特定の目標に到達するために一連の行動を計画し実行します。一方、学習エージェントは、環境や経験からのインプットを利用して行動を改善します。
また、マスターエージェント(階層型エージェント)と呼ばれるものも存在し、そのエージェントは、下の階層のAIエージェントを編成し、管理し、行動を指示します。
大手ITベンダーは、自社のポートフォリオでエージェンティックAIを強力に押し出しています。Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Cisco、Salesforce、SAP、Adobe、ServiceNowなど、そのリストは増え続けています。Googleは2025年1月、複数のAIエージェントのプロトタイプを備えた第2世代のGemini AIを発表しました。
多くのビジネスリーダーは、すでにAIエージェントに注目しています。世界的なコンサル会社であるCapgeminiによる、日本を含むグローバル調査によると、10%の組織がすでにAIエージェントをビジネスに活用しており、実に82%が今後1~3年のうちにAIエージェントを導入する予定だということです。
増えている活用事例
エージェンティックAIのユースケースは、その活用を望む企業やポートフォリオに取り入れるベンダーの数と同じくらい、急速に増加しているようです。ここでは、このテクノロジーにおいて、より注目されているユースケースをいくつか紹介します。
- カスタマーサポート: カスタマーサービスのためのチャットボットは現在、単一の質問に回答する仕様になっています。しかし、AIエージェントは対話の文脈と問題を理解し、解決するよう設計されています。エージェンティックAIシステムは、単に代替のフライトを提案するのではなく、最適な選択肢を見つけ、フライトを予約し、必要であれば航空券を変更し、目的地でレンタカーを予約することができるのです。先述のCapgeminiの調査では、ビジネスリーダーの64%が、エージェンティックAIは顧客サービスを「大幅に」改善するであろうと回答しています。
- 企業のワークフロー: SalesforceやServiceNowのようなベンダーは、AIエージェントを自社製品に統合しており、ビジネスプロセスを合理化して効率を高めています。AIエージェントは、電子メールを作成・編集し、送信スケジュールを設定し、ファイルを添付し、質問がある場合や未回答の場合はフォローアップすることができます。エージェントは電話会議を聞き、それに基づいてToDoリストを作成し、タスクを作成・割り当て、戦略を立て、次のステップを決めることができます。
- サイバーセキュリティ: AIエージェントは、単に攻撃の可能性を検知してアナリストに警告するのではなく、異常を検知し、分析し、リスクを判断し、防御戦略を立案・実行し、脅威を緩和することができるようになります。
- 財務計画: エージェントは、複数のソースから得た財務データを継続的に分析し、パフォーマンスを追跡し、投資や予算の推奨と変更を行い、データをレビューし、予測を行うことにより、リアルタイムの洞察を提供することができます。同時に、取引を自律的に監視し、疑わしい行動にフラグを立て、異常な口座活動を検出し、潜在的な詐欺の試みを食い止めるための調整を行うことができます。
- サプライチェーン: AIエージェントは、市場を分析し、ベンダーを比較し、特定の基準に基づいて提携するベンダーを選択し、パフォーマンスを追跡し、契約を管理し、推奨することによって、サードパーティーベンダーの契約を積極的に管理することができるのです。
これらは、急速に拡大するエージェンティックAIの活用事例のほんの一例に過ぎませんが、このテクノロジーがビジネスにもたらす可能性と、顧客満足度からコスト効率まで、あらゆる面で飛躍的な効果をもたらす可能性を物語っています。
今こそ準備を
とはいえ、AIエージェントを活用するためには、経営幹部はまず自分たちの組織において様々な準備を行う必要があります。ここでは、その土台を築くために必要な主なステップを紹介します。
- データを整備する:エージェンティックAIは、他のAIと同様に、学習し行動するために、高品質で、構造化され、安全で多様性の高いデータに依存します。データ戦略では、データの収集と管理だけでなく、エージェントは複数のソースからデータを取得するため、データの統合も行う必要があります。データガバナンスは、データの安全性と規制準拠を確保するための鍵と言えます。
- 組織の体制を整える: どのようなAIを導入する場合でも、役割を再定義し、従業員がAIを活用し、監視し、結果を得るためのトレーニングを受ける必要があります。エージェンティックAIは、組織の運営方法を様々な形で変えていくでしょう。従業員がそれを受け入れる準備ができていれば、よりスムーズに進行できます。
- 規律を守り活用する: 無差別にAIエージェントを取り入れようとしてはいけません。ほとんどの企業は、生成AIに関する取り組みを始めたばかりです。事業の特定の部分でエージェントを使用してみて、そこから次を目指していくのが良いでしょう。
- 使用するモデルを選択する:生成AIやそれ以前の予測AIと同様に、エージェンティックAIを運用するには、強力で高価なインフラが必要になります。ワークロードを実行するためのITやコンピュータ・コンポーネントを備えたスケーラブルなインフラがすでに存在するクラウドを利用するのがベストなのか。それとも、データセキュリティや主権上の理由から、一部のタスクはオンプレミスで実行する必要があるのか。ハイブリッドな状況を想定している企業が多いのではないでしょうか。
まとめ
ビジネスの可能性を広げる可能性を持ち合わせたエージェンティックAIへの期待が高まっています。エヌビディアのプロダクト・マーケティング・ディレクターであるエリック・パウンズ氏は、これを 「人工知能の新たな領域(ネクスト・フロンティア)」と呼んでいます。
他のテクノロジーと同様、それは利点と課題をもたらします。重要なのは、人工知能に何ができるのか、どのように備えればいいのか、セキュリティやその他のハードルにどう対処すべきかを理解することです。今こそ、学び始める時なのではないでしょうか。
著者について

Jeffrey Burt(ジェフリー・バート)
ジェフリー・バートはジャーナリストとして30年以上のキャリアを持ち、2000年からIT業界に関する記事を執筆しています。データセンター・インフラやクラウド・コンピューティングから、AI、サイバーセキュリティ、量子コンピューティング、開発者ツールまで、幅広いテクノロジーを網羅し、eWEEK、The Next Platform、The New Stack、SecurityBoulevard、Techstrong.aiなどのニュースサイトに寄稿しています。linkedin

Brian Shellhorn(ブライアン・シェルホルン)
ブライアンは、テクノロジー、メディア、エンターテインメント業界におけるマーケティング・オペレーショナル・エクセレンスを専門とし、20年以上の実績を持つビジネスエグゼクティブです。一流ブランドと協業するチームを率い、成長を促進し、効率性と収益性を高めるためにマーケティング業務を合理化しています。クライアントに信頼されるアドバイザーとして、複雑な現代マーケティングの世界をナビゲートする戦略的ガイダンスを提供しています。ブライアンはコロラド大学でコミュニケーション学の学士号を取得し、臨時雇用労働力の専門家として認定されています。現在、コロラド大学コロラドスプリングス校の戦略AIプログラムのプログラム・アドバイザーを務めています。Linkedin
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