今日のクリエイティブリーダーたちは、デジタル変革のペースが加速する中で、企業やブランドの競争力を維持するために、絶えずイノベーションを起こすよう求められています。革新的なアイディアの多くは新たな領域に足を踏み入れることから生まれますが、それはチームがリスクをとることを恐れず、安心してチャレンジできる環境が必要となります。
データによれば、人間の大半はリスクを嫌う傾向にあります。カンヌライオンズの2025 State of Creativity Studyによると、クリエイティブな意思決定を行う際、回答企業(ブランド)の3分の1近くが自社を「極めてリスク回避的」だと認識しています。しかし、リスクなくして変化はなく、変化なくして進歩もありません。
では、リーダーたちはどのようにしてチームがリスク回避の壁を乗り越え、新しいテクノロジーや働き方を活用できるよう支援できるのでしょうか。エイクエントが運営するリーダーコミュニティ「InsideOut」では先日ラウンドテーブルを開催し、日々この課題に取り組んでいる優秀なクリエイティブおよびマーケティングオペレーションのリーダーたちと共に、この課題について話し合いました。
そこから見えてきた、実践できるいくつかの戦略をこの記事でご紹介します。
【目次】
チームがリスクを回避する理由を考える
組織的な変革こそがリスクを恐れないチームづくりのカギとなる
・最適な判断ができる環境を
・リスクをとり、そこから学ぶための目標を設定する
・リスクを受け入れた先にある、成功と失敗を可視化する
まとめ
チームがリスクを回避する理由を考える
社員がリスクを避ける理由はいくつも考えられます。面倒だと感じているのではないか、古い習慣に固執しているのではないかと簡単に思い込んでしまいがちですが、職を失うことを恐れているケースや、さらに深く掘り下げてみると、職場の文化こそが進歩の最大の障害となっていることがあります。
出社・在宅を組み合わせたハイブリッドや完全リモート型の働き方では、この課題はさらに顕著になります。社員を真に結びつけるコミュニケーション体制を確立している企業は多くはありません。模範となる行動を目の当たりにできないため、一歩踏み込んだ発想や発言をすることへの懸念から、対立を避ける無難な行動をとってしまう社員が多く見られます。企業が絶えず組織再編を行う中、誰が責任者で、彼らが何を求めているのか、そして自分がどのように関わるべきなのかを見極めるのは、非常に困難なことです。
当社のラウンドテーブルでは、チームメンバーが自身の持つ力を認識できず、率先して行動する代わりに許可を待つ姿勢になっているという課題が共有されました。そこであるリーダーは、新任マネージャーの要求に一貫性を見出せずにいた社員に対し、待つのではなく、自ら行動を起こすよう助言したそうです。
変革の妨げとなるもう一つの要因は、スピードや簡潔さよりも完璧さを過度に重視することです。厳格なプロセスやルールに従うという概念そのものが、ビジネスにとって最善の選択をすることよりも、正しいシステムに従うことを優先させるような環境を生み出しています。品質と効率が依然として重要である一方で、そのバランスを取ることは容易ではありません。
組織的な変革こそがリスクを恐れないチームづくりのカギとなる
ラウンドテーブルに参加したリーダーたちは皆、トップダウンによる支援が不可欠であると口を揃えて言っています。具体的には、自らリスクをとる姿勢を示すこと、チームが失敗を許容できる環境を整えること、そして後になって批判することなく、意思決定を公然と支持することが重要だと考えています。社員が「行動を起こすこと」が「何もしないこと」よりも安全であると実感できれば、積極的に行動するようになるでしょう。
リモート環境で働く組織であっても、リーダーは書面でのコミュニケーションやグループ会議において、自らの失敗を率直に共有し、リスクがイノベーションの触媒となり得ることを示すことで、こうした姿勢を率先して示すことができます。しかし、その行動を助長する組織体制を構築できなければ、真の成果は得られないでしょう。
最適な判断ができる環境を
組織編成を引き金に、チームの方向性が変化することは多々あります。変化を乗り切ろうとする社員にとって、シンプルで柔軟な意思決定システムは不可欠です。ラウンドテーブルに参加したあるリーダーは、すべてのクリエイティブアセットに関してCMOの承認を得ることは求められているものの、それは必然的に遅延を招くものであり、マネジメント層に情報を共有する仕組みを整えた上でその権限を委譲できることに気づいた、と語りました。
最終承認者を明確にするためのシンプルな承認プロセスと、プロジェクトの重要度を示すための作業階層化システムを導入することで、リーダーは創造性を損なうことなく、望ましい行動と望ましいビジネス成果を結びつけることができるようになります。承認を必要としない実務作業にはテンプレートを使用することも、一貫した成果を確保しつつ意思決定を効率化する、もう一つの方法です。
別のクリエイティブリーダーは、ハーバード・ビジネス・レビューの記事を引用して次のように指摘しました。文化変革は多くの企業の関心事ですが、その実現には、変革を推進する仕組みを見直す必要があります。個々の自律や学習できる環境づくりよりも複雑なプロセスの順守を優先すると、組織全体の成長が阻害されます。ワークフローを監査してボトルネックを取り除くことで、社員は採用時に評価されたスキルを活用し、さらに磨く機会を得られるようになります。
リスクをとり、そこから学ぶための目標を設定する
ほとんどの業績管理システムは、スキルの習得や定量化可能な成果に重点を置いているため、良くも悪くも測定できる指標が優先される傾向にあります。当社のラウンドテーブルの参加者たちは、リスクを受け入れ、イノベーションを生むことを個人の目標に直接組み込むことを推奨しました。
例えばあるリーダーは、新しいアイディアを提案し、ビジネスの改善策を模索する者に昇進の機会が与えられることをチームメンバーに明確に伝えているそうです。昇進が発表される際には、たとえその取り組みが期待通りの成果を生み出さなかったとしても、彼らが取ったリスクを公に評価しています。リスクをとることで付加価値を生み出すことの重要性について明確な期待値を設定することは、試行錯誤する際の指針と説明責任を提供します。
別のリーダーは、経営層が定期的に集まる際、社員がどのようにリスクを受け入れ、イノベーションを推進し、組織内の他の人々の変化への適応力を高めているかについて議論していると語りました。ハイパフォーマンスとはどのようなものかを意図的に時間をかけて言語化することで、お互いのチームを奮起させるような事例を共有することができているそうです。
リスクを受け入れた先にある、成功と失敗を可視化する
当社のラウンドテーブルに参加したリーダーたちは、リスクをとる人々を称えるための、正式で意図的な機会を設けることの重要性を指摘しました。あるリーダーは、協調性、革新性、そしてインパクト重視の姿勢を示す社員を対象とした、四半期ごとの表彰プログラムについて紹介しました。
同僚からの推薦に基づき、役員が表彰対象者を選定することで、経営陣レベルで何を重視すべきかについて一貫性を高めていると語っています。受賞者にはギフトカードが贈られるそうですが、金銭的報酬よりも表彰する行為自体が効果的です。このようなプログラムを構築するのが難しい場合は、他者に最も影響力のあるグループから小規模に始めてみるのも良いのではないでしょうか。
組織内外を問わず、リスクをとる行動の事例を収集・共有することは、創造性を刺激し、大胆な意思決定を当たり前のものにしてくれます。あるリーダーは、「キャリアにおける最大のリスクは、求められたこと以上の行動を決して取らないことである」と指摘しています。勇敢な社員をヒーローとして称え、成功するために必要な革新的な行動の模範としましょう。
まとめ
職場や組織はそれぞれ異なるため、リスクを許容する文化を築くための万能な解決策は残念ながら存在しません。まず第一歩として、自分のチームのリスク許容度を把握し、その背景にある理由を深く掘り下げて理解することをお勧めします。そこで明らかになる事実は意外なものかもしれませんが、おそらく想像以上に簡単に改善できるはずです。
ただし、リスク回避を完全に排除すること自体を目標にするべきではありません。現状を評価し、承認プロセスや業務の優先順位付けシステムを導入し、リスクとイノベーションを業績評価に組み込み、リスクを受け入れることを評価する制度を正式に確立することで、チームを成功へと導き、より良い未来を切り開くことができるでしょう。
「InsideOut」は、エイクエントが運営する、先進的なブランドのインハウスチームのシニアデザイン、エクスペリエンス、クリエイティブ・オペレーション・リーダーが集まるコミュニティです。メンバーの学びと成長をサポートするため、小規模なラウンドテーブルを開催しています。
【著者について】

Susie Hall(スージー・ホール)
コミュニティ&カスタマーエンゲージメント担当プレジデント
スージー・ホールは、Aquentのコミュニティ&カスタマーエンゲージメント担当プレジデントです。
1999年にインタラクティブ・エージェントとしてAquentに入社したのち、21年にわたり、地域のチームを率い、強固なインタラクティブデザイン事業を展開。2011年には、代理店や中堅企業の急速に進化するデジタル人材ニーズに対応するため、Vitamin Tブランドを立ち上げました。
ベスト・オブ・スタッフィング・サービス賞を15回受賞し、豊富な人脈を築いてきた彼女は、クリエイティブ、デザイン、リーダーシップへの深い理解を持ち合わせています。2019年、ホールはAquentのInsideOut デザインリーダーシップコミュニティを立ち上げ、現実的な課題に基づくピアディスカッションを通じて、有名ブランドのシニアインハウスデザイン、エクスペリエンス、オペレーションリーダーのつながりを醸成しています。
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