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成果をあげるチームのダイナミクスを公平に評価するには

By: Aquent

LAST UPDATED: 2024/06/18

Key Takeaways

  • 多様性のあるチームでは、異なる視点やアプローチを受けいれる必要があるため、「適応力」の定義が異なる場合がある
  • これまでリーダーに求められてきた規範に適合しない可能性のあるマイノリティや女性などのリーダーにとって、信頼と心理的安全性の確保は容易ではない
  • 多様性のあるチームは、フィードバックを受ける際に固定観念を浮き彫りにさせ、成長の機会を妨げる可能性のある、特有の課題に直面することがある
  • ストレスを効果的に管理することはチームが成果をあげるに当たって不可欠だが、その中で、チームメンバーのこころの健康に影響を及ぼす可能性のある社会的要因を認識することが大切である
  • チームの行動を公平に評価するためには、組織としてバイアスに対処し、明確な評価基準を確立し、フィードバックする仕組みを取り入れ、プロセスを定期的に最適化させ、チーム全体に権限を分配し、仕事のペースと余白を考慮し、職場環境を見直すことがポイント

AIの台頭や、出社の義務化により変わりゆく働き方、突然流動的になったDEI(多様性、公平性、包括性)へのコミットメントなど、ビジネス環境は急速に変化しています。チームとして成果をあげることは、これまで以上に難しく、不可欠なものとなっているのです。

エイクエントの「Talent Insights Report」から見て取れるように、高業績のチームは、信頼し合い、目的を共有し、適応することで、企業の優位性を体現しています。このようなチームは常に敏捷で、創造性、革新性、問題解決力に優れ、刻々と変化する今日のビジネス環境を比類ない熟練度で乗り切ることができます。彼らは、不可能と思われる状況下でも、何が可能かを示してくれる道標なのです。

しかし、このような成功の裏には、重大な疑問が隠されています。私たちは成果をあげるチームのメンバーを公平に評価できているのでしょうか。もしそうでないなら、 「ハイパフォーマンス 」の定義にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?

これらの質問を通じて、チームダイナミクスと公平な評価について突き詰め、我々の今までの評価方法を振り返り、経歴や役割に関係なく、各個人の貢献を本当に反映できているかどうかを検討してみましょう。

このブログでは、Talent Insights Reportで説明している、成果をあげるチームの特徴に照らして、さまざまなグループをどのように評価するべきかを探っていきます。

成果をあげるチームの定義

高業績のチームとは、単に熟練した個人の集まりではありません。信頼と心理的安全性を基盤として成り立っています。挫折を経験しても、それは学習機会に過ぎないと理解しているため、変化する課題に機敏に対応することができるのです。コミュニケーションは一貫して透明であり、孤立したサイロよりも誠実な対話を好み、適応力があり、目的志向で、インクルーシブであるのが特徴です。

当社のTalent Insights Reportでは、成果をあげるチームが見せる8つの具体的な行動を特定しています。それらは、1)適応と革新、2)ブランドパーパスに対する意欲、3)信頼の醸成、4)心理的安全性の促進、5)情報交換、6)多様な意見の追求、7)ストレスの管理、8)フィードバックの受け入れです。しかし、このようなチーム特性が、多様なグループ間でどのように解釈され、どのような経験に繋がるのかを考えることは重要です。これらの特徴をもう少し詳しく見てみましょう。

適応力の発揮

適応能力は、多くの組織にとって明暗を分ける要素です。市場は常に進化していて、停滞することは市場との関連性を低下させることを意味します。生き残り、イノベーションを生み出すためには、企業は適応することを求められます。しかし、多様な文化的背景を持つチームにおける適応性は、同質的なグループとは異なって見えるかもしれません。多様なチームにおける適応力には、異なる視点やアプローチを受け入れる受容性、異なる経験について学び、価値を見出す寛容さ、そして、相違によって生じる可能性のある対立を乗り越える意欲とスキルが必要です。

チームリーダーは、メンバーそれぞれの適応能力に差があることを常に認識しておく必要があります。例えば、スピード感を求められる職場環境に適応する必要がある場合、時間をかけて思慮深く貢献することを強みとするチームメンバーのパフォーマンスの評価にどのような影響があるでしょうか。マネジメント層からのコミュニケーションやワークスタイルの要求に適応する必要がある場合、好みが異なるメンバーのパフォーマンス評価にどのような影響があるでしょうか。真の適応力には、高い感受性、共感力、忍耐力、そして共通の土台を見つけ、共通の目標に向かって協力的に働くというコミットメントが必要なのです。

信頼関係と心理的安全性の構築


成果をあげるチームは、クリエイティブな問題解決法や戦略的思考が育つ環境を醸成するために、心理的安全性を大切にします。これは健全な職場にとって必要な要素であることは間違いないですが、特に自分が共感できない既存の文化によって形成された職場に身を置くことが多いマイノリティや女性などのリーダーにとっては、心理的安全性を得ることは時に容易ではありません。例えば、同じアイデンティティや経歴を持つ経営幹部が他にいないマネジメントチームに所属している場合、優勢な文化によって形成された職場において自分らしさをどう保つかを模索しなければならないかもしれません。独自のリーダーシップが奨励されていても、そのリーダー特有の独自性が尊重されていなければ、独特すぎると思われることも。そのことに疑問を持ち、結果、その環境を十分に信頼できなくなるかもしれません。

心理的安全性とは、自分らしさや、時には弱さを見せ、それに対するサポートを受けられるような居心地の良さを感じることです。多様性のあるチームのメンバーの多くにとっては、個性の表現に留まらず、歴史的に限られた人種や男性中心のリーダーシップにおける目線で定義されてきた、期待やパフォーマンスに関する長年の規範に挑戦することを意味します。その挑戦は容易ではなく、リスクも伴い、負荷がかかります。

成果をあげるチームのために信頼と心理的安全性を構築することにコミットするとき、我々はマイノリティや女性などのリーダー特有の課題を認め、共感しなければなりません。心理的安全性への道のりは険しく、最も効果的なチームは、その上り坂を低くするような文化を意図的に育んでいるのです。

フィードバックする文化を育む

フィードバックを受け入れることは、成果をあげるチームのもう一つの特徴であり、成長、革新、チームの結束のための基本的なツールとして機能します。しかし、チームダイナミクスにおけるこの要素は、意義のあるフィードバックを受ける際に存在する男女や人種格差を考慮するとより複雑になります。

私が出版した本、『Untapped Leadership』の中で、電力会社のシニア・マネージャーであるタミーについて、痛切な例を紹介しています。アジア系女性と自認しているタミーは、非白人系のリーダーがフィードバックを受け、それを活用することの複雑さを説明してくれました。彼女の職場は多様性に取り組んでいるにもかかわらず、効果的なリーダーとして認識されるためには(あるいは言い換えれば、ハイパフォーマーと思われるためには)、伝統的な男性優位の規範を守らなければならないというプレッシャーを感じていたのです。

このような適合性への暗黙の期待は、彼女が受けるフィードバックにも及び、そのフィードバックは、彼女の長所や独自のリーダーシップの資質を伸ばすというコミットメントよりも、欠点として認識された些細な点に焦点を当てることが多かったそうです。タミーは、この基準が彼女に影響を与えただけでなく、会社の従来のモデルから逸脱した他の従業員が社内でどのように評価され、育成されるかにも影響を及ぼしていることに気づきました。

タミーの経験は、チーム・ダイナミクスの重要な側面を浮き彫りにしており、フィードバックはパフォーマンスの向上だけでなく、文化的な期待や固定観念のニュアンスをうまく調整することでもあることを示しています。例えば黒人女性は、白人男性に比べ、行動に移せないフィードバックを受ける可能性が9倍も高く、リーダーシップの機会や長期的な収入に影響を与えています。

建設的であるつもりでも、フィードバックはうっかり固定観念を表面化させ、自分のアイデンティティの要素を抑圧せざるを得ないと感じる環境を作り出してしまうことがあります。タミーの経験は、自分らしさと、既存のリーダーシップ・スタイルに従わなければならないという仕事上の必要性との間の微妙なバランスを管理するという、マイノリティや女性などのリーダーたちにとってのより広範な課題を浮き彫りにしています。このような抑圧は、独自性を損ない、その役割に自分らしさを活かすことを制限してしまいます。その結果、表面的には高いパフォーマンスを発揮しているように見えるチームであっても、よくよく観察してみると、その潜在能力を最大限に発揮することを阻害されている者がいるというシナリオが生まれる可能性があるのです。

ストレスの管理

ストレスを効果的に管理することは、成果をあげるチームにとって不可欠な要素です。過度なプレッシャーは、短期的な目標は達成できても、長期的には生産性、士気、エンゲージメントに悪影響を及ぼす可能性があるのです。出社する際やバーチャル会議に参加する際に、社会的な負担を背負っているチームメンバーがいる可能性を考慮すると、この理解はさらに重要になってきます。介護の責任を担うことが多い女性は、仕事の前に複数の緊急の優先課題をこなしているかもしれません。非白人系のリーダーは、自分たちのコミュニティに対する組織的暴力のニュースを目撃し、精神的に影響を受け(2020年のGeorge Floyd事件の例からも見て取れるように)、そのイメージを職場に持ち込むかもしれません。このような一般的なシナリオは、プロフェッショナルな環境において、しばしば目に見えない重い負担となり、仕事上の責任範囲を超えて広がっていくことがあります。

成果をあげるチームは、職場に関連するストレスを和らげるだけでなく、多様なメンバーが直面するそれぞれの課題を認識し、サポートし合うことが不可欠です。特に、マイノリティのコミュニティが影響されることの多い社会的トラウマがあった際は、チームや組織がこころの健康の維持に向けて取り組む方法を再評価する必要があるでしょう。成果をあげるチームは、女性、マイノリティである人種、LGBTQ+コミュニティのメンバー、その他目に見えない課題に直面している多くの人々のこころへの負担が認識されるような文化を創造し、すべての人がベストの状態で貢献できる環境を作るよう努力すべきなのです。

つまり、成果をあげるチームにおけるストレスマネジメントは、従来の職場のプレッシャーへの理解を超えたものでなければならないのです。「私情を持ち込まない」という従来のモデルが時代遅れで非現実的であることを理解した上で、私たちの多くの人々に影響を与える社会的要因や生活環境を認識する、総合的なアプローチをとるべきではないでしょうか。

チームとしての行動の公平な評価

チームの行動を公平に評価するには、チームメンバー一人ひとりの貢献、特に社会的にマイノリティや女性などのメンバーの貢献を認識する必要があります。従来の評価方法における暗黙のバイアスは、特定の長所を見落としたり、成績不振を助長している可能性のある、組織的な問題を個人の問題として誤認したりすることに繋がりかねません。これに対処するには、異なる視点を受け入れ、チームメンバーの様々な背景を考慮しながら、チームの総合的なアウトプットに焦点を当てる必要があります。

ここでは、高業績なチームを育成する際に公平な評価をするための戦略をいくつか紹介します:

バイアスを認識し、対処する: 多くの場合、無意識のうちにバイアスが評価プロセスを歪める可能性があることを認識しましょう。チームリーダーやメンバーが自分のバイアスを認識し、軽減できるよう、研修や意識向上プログラムを実施し、生産性という狭いレンズを通して「ハイパフォーマンス」を定義することに注意します。
明確な評価基準を設定する: チームメンバーを評価するための客観的な基準を作成しましょう。これらの基準は、透明性があり、公平で、チームの目標と個人の役割に関連したものでなければなりません。
広くフィードバックを受け入れる: 上からだけでなく、下からのフィードバック両方を可能にするシステムを導入しましょう。チームメンバーが懸念や提案を伝えられる、オープンで一貫性のあるコミュニケーションプロセスを確立し、透明性のある対応でフィードバックのループを閉じていきます。
権力と権限を分配する: 全てのチームメンバーに権力を共有するよう促し、各自の仕事に関するプロセスや意思決定における裁量権を与えます。これにより、心理的安全性と信頼を損なうマイクロマネジメントから脱却し、パートナーシップを伴うリーダーシップモデルへの移行を実現します。
仕事のペースと余白に配慮する:成果をあげるチームを目指す際に忘れがちなのは、時間を要するということです。イニシアチブが発展できるよう余裕を与え、オープンな議論とイノベーションを助長する環境を整えましょう。信頼関係の構築には、一貫した揺るぎないコミットメントが必要であることを認識することが重要です。
職場環境を見直す: 仕事、リーダーシップ・スタイル、行動が、組織内でどのように評価され、報われているかを確認しましょう。貢献やアプローチが認知されないことがないかを検討し、組織文化の中核とみなされているものを再定義します。

組織がすべきことは明確です:チームパフォーマンスの包括的で公平な評価を行うことにより、チームは強化できます。上記の戦略を実行することで組織は、より公平でインクルーシブな環境を保証し、すべてのチームメンバーの潜在能力を認識することでそれを最大限に活用することができるようになります。

まずは、チームメンバー一人ひとりの経験や貢献の性質が異なることを理解することから始めましょう。企業は、このような取り組みとコミットメントを制度化することで、チーム構成が変化し、ビジネス環境が刻々と変化し続けるなかでも、チームが最高のパフォーマンスを発揮し続けることを総じて保証することができるのです。

著者について

Jenny Vazquez-Newsum氏
Jenny Vazquez-Newsum(Ed.D.)氏は、リーダーシップ・ファシリテーター、作家、コンサルタントであり、多様なチームにおいて見過ごされている能力を発掘することを専門とする、リーダーシップ開発組織およびコンサルティング会社「Untapped Leaders」の創設者でもあります。過去20年以上にわたり、200を超える組織から500人以上のリーダーを指導してきました。その中には、大企業の重役からリーダーシップの道を歩み始めた高校生までおり、キャリアパスのあらゆる段階に存在する未開発の能力を目の当たりにしてきた経験があります。2023年6月に出版された『Untapped Leadership: Harnessing the Power of Underrepresented Leaders』の著者であり、南カリフォルニア大学で経営学の学士号、ニューヨーク大学で経営学修士号、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で教育学博士号を取得しています。


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